近年、地球環境問題への意識の高まりとともに、食品ロスが深刻な社会問題として注目されています。食品ロスとは、まだ食べられるにもかかわらず廃棄される食品を指し、日本だけでも年間523万トンもの量が廃棄されているという現状です。
このような状況を改善するため、2000年に「食品リサイクル法」(正式名称:食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律)が制定されました。この法律は、食品関連事業者に対し、食品廃棄物の発生抑制と再生利用等を促進することを目的としています。
食品リサイクル法制定の背景
食品リサイクル法の制定には、深刻化する食品ロス問題への対策が強く求められた背景があります。食品ロスは、食料資源の無駄遣いであるだけでなく、廃棄物処理に伴う環境負荷の増大、さらには経済的な損失にもつながる深刻な問題です。
食品リサイクル法は、これらの問題を解決し、持続可能な社会の実現に貢献することを目指して制定されました。
食品リサイクル法の概要
食品リサイクル法は食品関連事業者に対し、主に以下の取り組みを義務付けています。
● 食品廃棄物の発生抑制
食品の製造・加工・調理過程におけるロス削減、販売期限管理の徹底など、食品廃棄物の発生を抑制するための取り組み。
● 食品循環資源の再生利用
飼料化、肥料化、メタン化など、食品廃棄物を資源として有効活用するための取り組み。
● 定期報告
食品廃棄物の発生量や再生利用等の実施状況を定期的に報告すること。
これらの取り組みを促進することで、食品廃棄物の最終処分量を削減し、循環型社会の構築を目指しています。
食品リサイクルの優先順位
食品リサイクル法では、食品廃棄物の処理について以下の優先順位が定められています。
優先順位 | 内容 | |
---|---|---|
1 | 発生抑制 | |
2 | 再生利用 | 飼料化 |
肥料化(メタン化発酵廃液等の肥料利用を含む) | ||
油脂・油脂製品化 | ||
メタン化(発酵廃液を肥料利用しない場合) | ||
エタノール | ||
炭化(燃料および還元剤など) | ||
3 | 熱回収(一定の条件を満たす場合) | |
4 | 減量 |
まず、食品廃棄物そのものの発生を抑制することが最も重要視されています。次に、飼料化、肥料化といった再生利用を積極的に行うことが求められています。
再生利用が難しい場合は、焼却による熱回収も認められますが、再生利用できる施設が半径75km圏内に存在しない場合や、回収される熱もしくは電気の量が1トン当たり160MJ以上(廃食用油は1トン当たり28,000MJ以上)の場合といった一定の条件を満たす必要があります。そして、熱回収が難しい場合は、脱水・乾燥・発酵・炭化などにより減量化を行うことになります。
産業廃棄物の排出事業者として気をつけるべきこと・心がけるべきこと
産業廃棄物の排出事業者は、食品リサイクル法の遵守はもちろんのこと、以下の点に特に注意し、積極的に食品ロス削減とリサイクルに取り組む必要があります。
1. 食品廃棄物の発生量の把握と発生抑制
自社の事業活動から発生する食品廃棄物の種類と量を正確に把握し、その発生を抑制するための具体的な対策を講じることが重要です。例えば、在庫管理の徹底、発注量の調整、従業員への意識啓蒙活動など、発生源に応じた様々な取り組みを実施することで、食品廃棄物を削減することができます。
2. 再生利用の積極的な推進
発生した食品廃棄物は、可能な限り飼料化や肥料化などの再生利用に回すよう努めることも大切です。リサイクル業者との連携をしっかりと行い、自社の廃棄物に適した再生利用法を検討することで、リサイクル率の向上を図ることができます。
また、再生利用が難しい食品廃棄物は、熱回収や減量化といった方法を検討し、最終処分量を最小限に抑える努力が必要です。
3. 関係法令の遵守と罰則への注意
食品リサイクル法をはじめとする関連法令を遵守し、適切な廃棄物処理を行うことは、企業の社会的責任として非常に重要です。排出事業者は、定期報告を怠ったり、自社のみならず委託した事業者が再生利用等を十分に行わなかった場合、罰せられる可能性があります。法令の内容を正しく理解し、適切な対応を行うようにしましょう。
おわりに
食品ロス削減とリサイクルは、地球環境の保全、持続可能な社会の実現、そして企業の社会的責任を果たす上で不可欠な取り組みです。産業廃棄物排出事業者は、食品リサイクル法を遵守し、積極的に食品ロス削減とリサイクルに取り組むことで、持続可能な社会の構築に貢献していくことが求められます。