近年、不法投棄や環境汚染などが社会問題として注目されており、これらの原因のひとつとして産業廃棄物の不適切な処理が挙げられます。
特に、産業廃棄物の再委託はリスクを高める要因のひとつとして問題視されています。
本記事では、産業廃棄物の再委託について、原則禁止とされる理由、例外条件、そして再委託時に必要な手続きについて詳しく解説します。
産業廃棄物の再委託とは?
産業廃棄物の再委託とは、排出事業者から処理を委託された産業廃棄物処理業者が、さらに別の業者にその廃棄物の処理を委託することを指します。
再委託が原則禁止とされる理由
産業廃棄物の再委託は、廃棄物処理の責任を明確にするため、廃棄物処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)により原則として禁止されています。 ただし、政令で定める基準を満たす場合などに限り例外が認められています。以下は、原則禁止とされる主な理由です。
理由1:廃棄物処理の許可制度の趣旨に反するため
廃棄物処理法第3条第1項では、「事業者は、自らの事業活動で発生した廃棄物を責任をもって適切に処理しなければならない」と定めています。
そのため、廃棄物処理を委託する際には、許可の有無や行政処分歴などを確認し、適切な業者を選定する必要があります。
しかし、選定した業者がさらに別の業者に再委託した場合、廃棄物処理の許可制度の目的が損なわれてしまう恐れがあります。
理由2:責任の所在が不明瞭になり、不適切処理が起こるリスクがあるため
再委託が繰り返されると、排出事業者からの委託された廃棄物が複数の業者を渡り歩くことになります。その結果、処理に関する責任の所在が曖昧になりやすく、不法投棄や無許可業者による不適正処理が発生する可能性が高まります。
そのため、廃棄物を適正に処理するために再委託が禁止されているのです。
産業廃棄物の再委託の禁止に例外はある?
廃棄物処理の再委託は基本的に禁止されていますが、例外として認められる条件は産業廃棄物と一般廃棄物で異なります。
一般廃棄物の再委託は例外なく禁止
一般廃棄物の再委託については以下のように定められています。
(廃棄物処理法の第7条第14項より)
つまり、一般廃棄物に関しては例外的に再委託が認められるケースはありません。
産業廃棄物の再委託が例外的に認められる場合
産業廃棄物の場合は、下記の条件を満たすことで例外的に再委託が許可されます。これは、たとえば収集運搬車両や処理施設の故障といった緊急時に対応するためです。
ただし、事業者から委託を受けた産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を政令で定める基準に従つて委託する場合その他環境省令で定める場合は、この限りでない。
(廃棄物処理法の第7条第14項より)
ただし、一定の基準を満たさない場合は再委託は認められません。
また、以下のような契約を正式に交わすことが求められるため、例外的に認められるケースに当たる場合も安易な対応はせず、必要な手順を踏んで行わなければなりません。
■事前に排出事業者から書面で承諾を得ること
■書面には次の情報を記載すること
・廃棄物の種類および数量
・委託業者および再委託業者の氏名、住所、許可番号
・承諾の年月日
■委託業者は再委託契約書の写しを再委託業者に提供すること
■書面契約の適合性を確保すること
■排出事業者は承諾書の写しを5年間保管すること
(令第6条の2、令第6条の12、規則第8条の4の4、規則第10条の6の3)
再委託に関するトラブルが発生した場合は?
注意すべき点として、委託者の事前承認を得ずに再委託されるケースがあることです。
このような場合、まず取引を一時中断し、契約業者と話し合いを行い、再発防止策や今後の対応を協議します。それでも改善が見込めない場合は契約を解除することを検討しましょう。
ベストな対策は、業者名や車両の社名などが委託した業者のものであるかどうか確認するなどから産業廃棄物を引き渡す前に未承諾の再委託に気づくことです。引き取りに来た車両が再委託業者のものであると判明した場合、再委託について認知していないことを伝え、業者間で適切な契約を取り交わすよう促しましょう。
廃棄物を渡した後で未承諾の再委託が発覚しても、排出事業者は法的に違反を問われることはありません。ただし、できる限り防止に努め、適切な対応を行うことが重要です。
まとめ
産業廃棄物処理において再委託は原則禁止されていますが、一定の基準を満たせば例外的に認められる場合があります。再委託を行う際は、委託者が廃棄物の詳細や委託業者・再委託業者の情報を事前に確認し、承諾する必要があります。そのうえで、業者間で正式な契約を交わす必要があります。
未承諾の再委託が行われる可能性もあるため、排出事業者は正しい知識を持ち、適切に対処することが求められます。