産業廃棄物を委託する業者を選ぶ際、見積額の安さだけで選んではいませんか?
今回のコラムでは、業者を料金のみで選ぶリスクと選ぶ際のポイントについて解説します。
1. 業者によって料金が大きく異なる場合がある
産業廃棄物処理にかかるコストは、業者ごとに大きな差がある場合があります。処理施設を保有しているか、収集場所への距離やルート、許可品目の範囲、そして人員体制や保有施設等によって、料金体系が異なるためです。
たとえば自社で焼却炉や最終処分場を保有する業者であれば、中間処理を効率的に行うことも可能ですが、外部業者に再委託する処理業者は、その分の料金を上乗せする必要があるため、一般的にはコストが高くなる傾向があります。
長年同じ業者と契約し続けている場合は、過去の慣行に従い慢性的に高い処理単価を支払っているケースもあるでしょう。特に多品目を扱う製造業や建設業においては、年単位で数百万円以上の差が生まれることもあるため、定期的に業者比較をすることは大切です。
2. 品質の違いが生むコンプライアンスリスク
コストと同じくらい重要なのは、安心して委託できるかという品質面の差です。ここで言う品質とは、単に「ゴミが処理されたかどうか」ではなく、「法令に則った適正な処理がされているかどうか」という観点が含まれます。万一不適切な処理が発覚すれば、排出事業者である企業も「委託先の監督責任」を問われ、行政指導や企業名の公表といった重大なペナルティを受けるリスクがあるからです。こういった事態を避けるために、業者選定には以下のようなポイントでチェックを行いましょう。
安心できる業者選定のポイント
1.許可証が確認できるか
・産業廃棄物処理業・収集運搬業の「許可証」が有効であるか(期限・品目・地域など)。
2.委託契約書が整備されているか
・法定様式に則った適正な委託契約書を用意しているか。
・契約内容が現実の業務内容と一致しているか。
3.マニフェストが適正に運用されているか
・電子マニフェストまたは紙マニフェストの運用実績があり、記載ミスや未報告がないか。
4.処理施設が見学できる、または情報開示されているか
・中間処理・最終処分施設の所在地が明確で、見学や説明対応が可能かどうか。
・処理のフローがわかりやすく提示されるか。
5.再委託の有無とその透明性があるか
・処理工程で再委託がある場合、その委託先も適切に許可を持っているか。
・委託先の情報開示に応じるかどうか。
6.過去の行政処分歴の有無
・環境省や都道府県の公表情報で、過去の処分歴(許可取消・改善命令など)がないかを確認する。
7.対応の丁寧さと説明力
・廃棄物の処理方法などについて、専門的な説明ができる担当者がいるか。
8.実績と信頼性
・同業種や地域での取引実績が豊富か。
・優良認定企業やISO認証など企業として外部評価されているか。
こういったポイントを意識して業者を選ぶすることで、コスト面だけではなく、本当に信頼できる業者かどうかの見極めができます。
大事なのは複数業者を比較検討すること
最終的な業者選定にあたっては、コストと品質のバランスを考慮することが大切です。極端に安価な見積もりには、不法投棄や不適正処理のリスクが潜んでいる可能性も否定できません。一方で、高すぎるコストが必ずしも高品質を保証するわけでもありません。自社の予算や求めるサービスクオリティを明確にし、それに見合った最適な業者を選び出すことが大切です。
また、一度契約を結んだ後も、定期的に契約内容や処理状況を見直し、問題がないかのチェックを行いましょう。産業廃棄物処理は、企業の社会的責任と深く関わる重要な業務です。信頼のおける業者を選定することが、自社の適正な処理につながり、社会的な信頼の維持と持続可能な企業経営に繋がります。手間を惜しまず、慎重かつさまざまな視点から業者を選定し、安心できる産業廃棄物業者を選びましょう。