現在、コロナ禍の影響もあり、色々な業務が電子化・オンライン化する流れが加速しつつありますね。
廃棄物処理の現場でも、以前から「電子マニフェスト」という従来の紙マニフェスト制度が電子化された仕組みがあります。
今回の記事では、電子マニフェストと紙マニフェスト、それぞれの特徴や利点について学んでいきましょう。
そもそも、マニフェスト制度とは
マニフェスト制度とは、産業廃棄物の排出事業者が収集運搬業者や処分業者に対してマニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付し、処理状況の把握をする仕組みです。1998年度に施行されました。
書類上で廃棄物の流れを追うことで、廃棄物の不法投棄を監視し、抑制する働きがあります。
①紙マニフェストの交付
産廃の排出事業者は、マニフェスト(7枚複写A票・B1票・B2票・C1票・C2票・D票・E票)に必要事項を記入し、A票を手元に残し、残りのマニフェスト(B1票~E票)を産廃回収時に収集運搬業者に交付します。
②産廃の運搬終了の報告
指定された処分業者へ産廃を運搬した収集運搬業者は、マニフェスト(B1票・B2票・C1票・C2票・D票・E票)を処分業者に回付し、処分業者は、産廃受領印を捺印後、B1票、B2票を収集・運搬業者へ渡します。産廃収集運搬業者は受け取ったB1票を手元に保管し、B2票を報告書として排出事業者に送付します。
③中間処分終了の報告
中間処分業者は産廃の処分終了後、収集運搬業者にC2票を、排出事業者にD票を送付し、産廃の中間処分完了について報告を行います。C1票は手元に5年間保存します。
④最終処分終了の報告
中間処理業者は、委託した最終処分業者から最終処分の報告を受けたのち、手元に保管しているE票に処分終了年月日、最終処分の場所を記載し、排出事業者に返送します。
⑤産廃の処分についての確認、伝票保管
排出事業者は、返送された各マニフェスト伝票を確認し、定められた期間(送付受領から5年間)まで保存します。
電子マニフェストとは?
電子マニフェスト制度とは、従来は紙ベースでやり取りするマニフェスト情報を電子化し、排出事業者、収集運搬業者、処分業者の3者が情報処理センターを介したネットワークでやり取りする仕組みです。
通常、紙マニフェストはA・B1・B2・C1・C2・D・Eの7枚複写式の構成となっていて、産業廃棄物の種類と行き先ごとに交付されます。
紙なのでなくさないように注意する必要がありますし、記入の不備や漏れなどに気を付けるほか、5年という保管義務があるために、保管のためのスペースが必要というデメリットがあります。
それらのデメリットを解消するのが電子マニフェストです。
電子マニフェストの仕組み
電子マニフェストは、排出事業者、収集運搬業者、処分業者のそれぞれがその処理状況に応じて必要情報を入力し、情報処理センターに情報を集約していく仕組みです。
情報処理センターは情報の保管と各利用者への通知などを行います。
電子マニフェスト導入のメリット
・効率性
情報端末の画面上で、廃棄物の処理状況が容易に確認できます。紙だと5年間の保管義務があり、一定の保管スペースが必要ですが、電子マニフェストだと、常に情報センターにデータが送られるので、そういった保存スペースが不要になります。
・確実性
入力不備等は電子マニフェスト入力時にわかるようになっているので、紙マニフェストで生じるような、書類の紛失や書き漏れなどを防ぎやすくなります。
・安全性
マニフェスト情報は情報処理センターに送信され、自動的に管理・保存されますので情報の流出などのセキュリティに気を遣う必要がありません。
電子マニフェストを導入するには
1.電子マニフェスト加入処理業者を確認する
電子マニフェストを利用するには、排出事業者だけでなく、収集運搬会社、処分会社もJWNET(電子マニフェストシステム)に加入する必要があります。
まずは処理委託先がJWNETに加入しているかを確認しましょう。
委託業者がJWNETに加入しているかどうかは、こちらのサイトで確認ができます。
分からない場合は、現在取引のある業者に直接聞いてみてください。
・JWNETに加入している収集運搬業者の検索
https://www.jwnet.or.jp/jwnet/about/lsearch/searchss.html
・JWNETに加入している処分業者の検索
https://www.jwnet.or.jp/jwnet/about/lsearch/searchsb.html
2.導入コストを確認し、プランを選択する
JWNETを利用するためには、JWNETシステム利用料を支払う必要があります。
自社の出す産廃の量や頻度により、プランを定める必要があります。
・詳しい料金表はこちら
https://www.jwnet.or.jp/jwnet/youshiki/payment/fee/
また、現場でインターネットを閲覧、入力作業ができるパソコン等端末機器の準備も必要です。
当然入力作業をするスタッフの教育なども前もって考えておく必要があるでしょう。
3.どのように運用するかを考える
実際に電子マニフェストを導入してから、どのように運用していくかのルール決めをしておく必要があります。
たとえば、
・必要情報について、誰が入力するか
・どのタイミングで入力するか
・数量の確定は誰が行うか
などの具体的な流れをあらかじめ想定し、決定しておくことが必要です。
さいごに
電子マニフェストに関するイメージは大体掴めたでしょうか。
公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(以下、JWセンター)の算出によると、2020年6月時点で、マニフェストの電子化率は63%だそうです。
完全に電子マニフェストに移行しない原因として、コスト(システム運用費)がかかることや、設備機器や教育など導入の手間などがあるようです。
確かに導入は大変ですが、色々とメリットもあるのも事実です。
今後ますますデジタル化は加速すると言われています。効率化のために検討してみてはいかがでしょうか。
・JWNET加入申し込みについて
https://www.jwnet.or.jp/jwnet/youshiki/procedure/index.html