おそらく誰もが一度は「粉塵爆発」という言葉を耳にしたことがあるかと思います。しかし、実際は何が原因でどのように引き起こされる爆発を指すものなのかはわからないという方も多いのではないでしょうか?
一瞬で建物の倒壊や人身への被害を巻き起こす粉塵爆発は産業廃棄物の排出や処理の現場でも起こり得るもので、十分な理解と対策が必要です。
今回はその粉塵爆発の原因や対策について取り上げます。
粉塵爆発とは?
粉塵爆発とは、空気中に浮遊する微粒子が連続的に燃焼することによって爆発を引き起こすことを言います。微細な粒子からなる粉体は、体積に対して表面積が大きく空気中の酸素と触れやすくなるため、酸化反応が促進され爆発的な燃焼へと繋がります。
粉塵爆発が起こる三つの条件
粉塵爆発が起こる主な条件は酸素、一定濃度以上の粉塵、発火の原因となるエネルギーの存在です。
酸素
粉塵爆発の条件の一つは空気中の「酸素」です。粉体によっては、特定の酸素濃度を超えると爆発が起こります。
一般的に、多くの有機粉塵は12~13%以下の酸素濃度では爆発しませんが、微細な有機物や金属粉末などは数%の酸素でも爆発の危険性があります。粉塵は表面積が大きいため、酸素との反応性が高まり、燃えやすい特性を持ちます。
微粉の状態で空気中に浮遊する粉塵
空気中に一定の濃度で粉塵が存在することにより、体積に対して空気との接触面積の大きい微細な粉体は酸化反応が促進され連続的な燃焼を引き起こし、爆発が起きます。
発火源(エネルギー)
上記のような状態で静電気など一定以上のエネルギーをもつ発火源が存在すると爆発が引き起こされます。
爆発領域と不爆領域
粉塵濃度、もしくはエネルギーが小さく、粉塵爆発に至る数値ではない領域のことを「不爆領域」といい、逆に着火エネルギーと粉塵濃度が爆発を引き起こす大きさに達している領域のことを「爆発領域」と言います。
粉塵爆発リスクの基準となる要素
粉塵爆発を引き起こしやすい状況かどうかを示す基準として、以下のような要素があります。
爆発限界濃度
発火源があれば爆発が起こる粉塵の濃度を爆発限界濃度といいます。微粒子間の距離が遠いと熱は伝播せず、濃すぎると燃焼するために十分な酸素が空間に無いため燃焼が継続せず、爆発は起こりません。
その間に当たる濃度の範囲が爆発範囲とされます。
粒子径
粉塵の粒子が細かいほど表面積が増え空気との接触面積が大きいため着火に必要なエネルギーが小さくなり、爆発の危険性が増します。粉塵爆発を引き起こす粒子径の範囲は100〜0.1ミクロンと言われています。
最小着火エネルギー
粉塵が最も爆発しやすい濃度の状態にある時、着火に必要なエネルギーの最小値。これが小さいと、静電気など小さな発火源でも爆発を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
発火温度
可燃性の物質は空気と接した状態で加熱されると、直接の発火源がなくても一定の濃度で発火します。この温度を発火点といい、一般的には酸素と反応しやすい物質ほど発火点が低いと言えます。
粉塵爆発を起こしやすい廃棄物
上記の総合的な観点から爆発の起こりやすさは変化しますが、粒子が小さい且つ空気中に長く滞留する粉塵は爆発の危険性が高くなる傾向にあります。
アルミ粉末、トナー粉、木くず、研磨粉、鉄粉、ブラスト粉、その他マグネシウムや酸化第二鉄などの酸化しやすいものや帯電しやすい物質
粉塵爆発を防ぐためには?
廃棄物の粉塵爆発は、排出事業者と処理業者ともに起きる可能性があります。
事故を未然に防ぐためにどのようなことができるのでしょうか。
粉塵管理を徹底する
人為的な要素による事故を防ぐためにも、徹底した管理を行うことが必要です。
燃焼するだけの酸素があるという条件の一つを断つために使用容器を密閉するということも一つの防止策です。粉体を扱う際は密閉容器で取り扱うことを徹底するようにしましょう。
粉塵の爆発危険性の把握
発生する粉塵の爆発危険性をしっかり把握しておくことも重要です。取り扱う物体の性質や発火のしやすさ、滞留のしやすさなど、粉塵爆発の起こりやすさに関わる要素についてしっかりと把握しておくようにしましょう。
発火源の管理を徹底
粉塵が発生しやすい現場では、粉塵管理のほか発火源を管理することが事故発生の抑止に重要です。静電気や火花、電気設備によるスパークなどあらゆる原因をできる限り除去する、もしくは粉体の発生場所から離すよう取り組むことが大切です。
まとめ
一見危険性が無いように感じる小麦粉などの身近な物質でも、大規模な爆発事故をとなる可能性がある粉塵爆発。
粉末になったコンクリートや木や鉄などが舞い上がりやすい産業廃棄物の排出現場や処理現場では特に、このような危険性が潜んでいます。取り扱うものの危険性をしっかりと把握し、対策を怠らないことが事故の防止にはとても重要です。