私たちの身の回りには、家具や建築資材、紙製品など、木材を原料とした製品が数多く存在しています。
木材は再生可能な資源である一方で、無計画な伐採や森林破壊によって、生態系への影響や地球温暖化の一因となることもあります。
そのため、限りある森林資源を守りながら持続可能な社会を実現することが大切です。
今回は、ビジネスで廃棄される木材のリサイクルについて解説しましょう。
ビジネスで廃棄される廃棄木材の種類
ビジネスで廃棄される廃棄木材にはいくつかの種類があるのでご紹介しましょう。
建設・解体業界:建築資材の残材や解体木材
最も多くの廃棄木材が発生するのが建設・解体業界です。新築の現場では、柱材や合板、足場板などの端材や不要となった木材の切れ端が発生します。また、古い建物を解体する際には、フローリング材、梁、天井板、ドア枠などの使用済み木材が大量に排出されます。これらは場合によっては再利用可能な場合もありますが、傷みや汚れが激しい場合、リサイクルチップとして処理されます。
製造業:木製パレットや梱包材
製造業や物流業では、製品の運搬に使う木製パレットや木箱、梱包用の木材枠などが多く使われています。これらは使用回数を重ねるうちに破損したり、サイズが合わなくなったりして廃棄されます。特に輸入品の梱包材は、一度使用されたあと国内で再利用されずにそのまま廃棄されるケースも多く、「一回限りの使い捨て」になってしまうことが課題となっています。
最近では、これらの木材を再加工して再利用したり、再生チップとして燃料や資材に活用する動きが進んでいます。
小売・飲食業:内装材や什器の更新
意外と見落とされがちなのが、小売業や飲食店などでの店舗改装時に発生する木材廃棄物です。例えば、店舗の棚やカウンター、床や壁面の木製パネルなどが、新しいデザインやコンセプトに合わせて取り替えられるときに大量に廃棄されます。また、老朽化した什器(じゅうき:ディスプレイや陳列棚など)も廃棄対象になります。こうした木材は、一見使えないように見えても、再加工してカフェのテーブルや棚などに生まれ変わることもあります。
このように、さまざまな業種・業態で、まだ使える可能性のある木材が大量に廃棄されているのが現状です。しかし、これらを「ゴミ」ではなく「資源」としてとらえることで、環境負荷の軽減だけでなく、アップサイクルビジネスやエコプロダクト開発のチャンスにもつながります。
木材の主なリサイクル方法
木材のリサイクルは、その形や用途によってさまざまな方法が存在します。
例えば、建築現場から出た廃材や古い家具などは、形状や質が良ければ再加工されて再び建築資材や家具に生まれ変わることがあります。一方、使い古されて原型を保っていない木材は、破砕してチップ状にし、合板やパーティクルボード、燃料用ペレットなどの材料として再利用されます。
また、焼却時の熱エネルギーを活用する「サーマルリサイクル」も、エネルギーに変えるという点でリサイクル手法の一つと言っても良いでしょう。さらに、近年では廃木材を炭化させて炭素材として再利用する試みや、木の繊維を再抽出して紙や繊維製品の原料とする技術も進んでいます。
私たちができることと、これからの展望
木材リサイクルを進めるためには、行政や企業だけでなく、私たち一人ひとりの意識と行動も欠かせません。家具や木製品を選ぶ際に「リサイクル材を使用しているかどうか」に注目したり、不要になった木製品をリサイクルに出すことや、あるいは可能な範囲で修理や再利用を心がけることが重要です。
また、DIY文化の広がりとともに、廃材を活用したオリジナル家具の制作や、地域のリサイクルセンターでのワークショップなど、木材を「資源」として捉える動きが広まりつつあります。将来的には、より高度なリサイクル技術の開発や、持続可能な木材利用の仕組みづくりが進むことで、木材リサイクルは単なる「ゴミ対策」にとどまらず、循環型社会の中核を担う存在になっていくかもしれません。