「専ら物」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
廃棄物の処理を委託するときには、原則として必ず廃棄物処理業の許可を取得した業者に委託し、さらに産業廃棄物であればマニフェストの発行が不可欠ですが、廃棄物の種類によりこの二つが免除される特例も存在します。
ただし、免除と言ってももちろん自由に取り扱って良いわけではなく、満たすべき条件がありそれを確実に実践する必要があります。
今回の記事では、廃棄物処理の特例「専ら物」とその取り扱いについてしっかり理解しましょう。
「専ら物」とは
専ら物(もっぱらぶつ)とは、廃棄物処理法の例外であり、正式名称は「専ら再生利用の目的となる産業廃棄物または一般廃棄物」です。
具体的には下記の4品目を指します。
■ 「専ら物」とされる4品目
- 新聞などの「古紙」
- 古着などの「古繊維」
- アルミ缶などの古銅を含む「金属くず」
- 「空きびん類」
専ら物を扱う事業者(専ら業者)の特例措置は、以下のようになっています。
■処理業の許可(収集運搬業許可と処分業許可の両方)が不要
※廃棄物処理法第7条第1項・第6項(一廃)
※廃棄物処理法第14条第1項・第6項(産廃)
■マニフェストの運用が不要
※施行規則第8条の19第3項(管理票の交付を要しない場合)
■許可業者に課される”処理基準”が適用されない
※廃棄物処理法第7条第13項(一廃)
※廃棄物処理法第14条第12項(産廃)
これらにより、専ら業者が「専ら物」を取り扱う場合は一般廃棄物・産業廃棄物に限らず収集運搬・処分ともに許可不要とされています。
ただし、本当に「専ら物」として取り扱えるのかの基準や、取り扱う場合の注意点についてしっかり理解しておく必要があります。
有価物との違いは?
専ら物との区別が間違われる種類のものとして、「有価物」があります。
しかしこれは不要になったモノでも「他人に有償で売却できるモノ」という基準があり、そもそも廃棄物には該当しません。
そのため廃棄物処理法は適用されないため、許可やマニフェスト、委託契約書等も必要ありません。
一方、専ら物はあくまで「廃棄物」として廃棄物処理法が適用された上での例外扱いとなりますので、本当に「専ら物」に該当するかどうかを適切に判断し、取り扱いには注意する必要があります。
「専ら物」として取り扱うための条件とは?
各種許可も免除されており、マニフェストも必要ないとされている「専ら物」。しかしそれは、「どう扱っても良い」というわけではありません。
「専ら物」として取り扱うためには、下記の2点を実践し、満たす必要があります。
(1)「マテリアルリサイクル」で処分すること。
マテリアルリサイクルとは、廃棄物を製品原料として「再資源化」「再生利用」するリサイクル手法です。
廃棄缶を破砕・溶融・固形化し、再生地金として缶製造の原材料したり、金属くずを溶かしインゴット(延べ棒)などに再生したりなどの方法が挙げられます。
熱回収を含む焼却や埋め立て等をする場合は単に「廃棄物」としての扱いになるため、収集運搬や処分の許可を取得している事業者に委託する必要性があります。
(2)必ず「委託契約書」を締結すること。
専ら物の取り扱いにおいてマニフェストの交付は不要とされていますが、廃棄物処理法の原則通りに「委託契約書」の締結・保存は必要となります。
取り扱い状況における一般的な必要・不要の区分は以下の通りです。
有価売却する場合
委託契約書 | マニフェスト | 許可 | |
---|---|---|---|
有価物 | 不要 | 不要 | 不要 |
専ら物として専ら業者に処理委託する場合
委託契約書 | マニフェスト | 許可 | |
---|---|---|---|
専ら物(産廃系) | 必要 | 不要(特例) | 不要(特例) |
専ら物(一廃系) | 必要 | 不要 | 不要(特例) |
専ら物に該当せず、処理業者に処理委託する場合
委託契約書 | マニフェスト | 許可 | |
---|---|---|---|
廃棄物(産廃系) | 必要 | 必要 | 必要 |
廃棄物(一廃系) | 不要 | 不要 | 必要 |
※「専ら業者」の解釈は、自治体により変わってくることがありますので、産廃系は都道府県、一廃系は市区町村などの各管轄部署に事前にご確認願います。
専ら物を処理業者に委託する際の注意点
通常の廃棄物なのか、専ら物なのかを明確に区別する
例えば古紙や古繊維などにおいて、状態の良い物であれば専ら物として回収できるものでも、食物残渣や汚物が付着していて再利用ができない場合には専ら物ではなく通常の廃棄物という扱いになります。
この場合にはもちろん廃棄物処理法の例外は適用されず、許可業者への委託や、産廃であればマニフェストの交付が必要となります。
委託する場合は専ら物としての取り扱いルールをしっかりと守ること
例外的に一部の義務が免除されているとはいえ、専ら物は廃棄物です。
許可業者への委託や産廃であればマニフェストの交付が免除されていても、適切な処理がされなかった場合には、廃棄物処理法の違反とみなされます。
専ら物として処理業者に委託する際も、適切に再利用してくれる業者をしっかりと見極めて委託するとともに、委託契約書は必ず取り交わすようにしましょう。